ジャズギタリストのスタンダード曲の名盤




ジャズギター初心者向けという趣旨で、ジャズスタンダード曲の名盤とも言えるアルバムを紹介します。ジャズギターを勉強する為に誰かのオリジナル曲やコード進行が不明な曲を聴いても身に付きにくいと思いますので、ジャズスタンダード曲が収録された名盤アルバムを沢山聴いてギターを練習する事はお勧めです。

ジャズのジャムセッションで演奏されるジャズスタンダード曲は楽器によっても偏りがあると思いますが、今回はギタリスト目線でのアルバム紹介となります。ジャズスタンダード曲のお手本のギタリストの演奏を探すことはなかなか大変だと思いますが、そんなギタリストの皆さんの参考になれば幸いです。

最近ではジャズスタンダード曲のコード進行はアプリでも見る事が出来ますし、いわゆる青本や黒本もあるので好きなジャズスタンダード曲のコード進行を確認しながらアルバムを聴くことが出来ます。

ジャズスタンダード曲を聴く時にその曲のフォームとキー、そしてコード進行を確認する事はかなり効果的な練習と言えます。

※紹介のアルバムの中には既に廃盤になっている、あるいは貴重な為に高額になっているものもありますのでご注意下さい。探していればタイミングによっては安価で手に入れる事が出来ると思いますので気長に探して下さい。

Wes Montgomery

「Wes Montgomery Trio」
「Yesterdays」はジャムセッションでよく演奏される人気の曲ですが、このアルバムではWes Montgomeryの暖かく、尚且つ艶のある素晴らしいギターの音でノリのいい「Yesterdays」が聴けます。そして渋い演奏の「Whisper Not」、「Satin Doll」も聴きごたえがあります。

「BOSS GUITAR」
ジャズギターの超名盤。このアルバムではバラードでジャズスタンダード人気の曲、「The Days Of Wine And Roses」をコードで演奏しています。酒バラが好きな方にはお勧め。

「Incredible Jazz Guitar 」
こちらもジャズギターの名盤。Wes Montgomeryがバラード曲、「Polka Dots and Moonbeams」を彼の代名詞、オクターブ奏法で演奏しています。こちらの曲はジャズギター学習者に(特に初心者の方)お勧めのジャズスタンダード曲です。

 

Joe Pass

「Chops」

Niels-Henning Ørsted Pedersenのベースとのデュオアルバムで2人の超絶テクニックが堪能出来るアルバム。収録曲は「Have You Met Miss Jones? 」、「OLEO」「Lover Man」「Come Rain Or Come Shine」、バラード曲の「Old Folks」など聴くべきジャズスタンダード曲が満載のアルバムです。
 
「Catch Me」

「Falling in love with love」ではスゥィングのリズムで軽快なJoe Passのギター演奏が聴くことが出来ます。「Summertime」では時々演奏されるブルース的雰囲気が素晴らしい。その他ジャムセッション人気のジャズスタンダード曲「Just friends」「The Days Of Wine And Roses」もあり、かなり楽しめる(参考に出来る)アルバムとなります。

「Joy Spring」

こちらはジャムセッション人気曲でありながら、なぜかジャズギターのアルバムではあまり聴くことが出来ない、「Night Has a Thousand Eyes」と、ジャズスタンダード曲の定番曲、「There Is No Greater Love」が聴くことが出来ます。「There Is No Greater Love」ではこれぞジャズというような常套句が満載でお勧めします。

「Recordando a Ella Fitzgerald & Joe Pass」

ベースラインとコンピングを同時に弾く演奏のお手本の演奏があまりありませんので、Ella Fitzgeraldと、Joe Passのデュオアルバムから「How High The Moon」を紹介します。Ellaの素晴らしい歌声と、Joe Passのベースラインとコンピングを同時に演奏する伴奏が、離れたり近づいたりして高い技術で遊んでいるような見事な演奏です。



Kenny Burrell

「Laid Back」

1曲目の「All Blues」ではKenny Burrellの渋いブルースギターが堪能でき、その他ジャムセッション人気のジャズスタンダード曲、「Groovin’ High」、「You And The Night And The Music」、「St. Thomas」「My One And Only Love」「In A Mellow Tone」など聴きどころ満載です。

Kenny Burrellの一貫して感じるブルースの雰囲気は美しくそして力強い素晴らしい演奏ですが、ギターの音色を聴いただけでゾクゾクするアルバムです。

 

Barney Kessel

「Autumn Leaves」

まさにジャズギター初心者向けジャズスタンダード曲の名盤といったアルバム、「Autumn Leaves」では1曲目にジャズ学習者定番の曲、「Autumn Leaves」で始まり、これぞジャズギターという演奏が楽しめます。ジャズ曲ではありませんがボサノバの美しい2曲目の「Corcovado」も、ジャズのジャムセッションで頻繁に演奏されるのでお勧めです。
 
「The Poll Winners」

Barney Kesselは典型的なジャズフレーズと、ブルースフレーズ、そしてジャズギタリストではほとんど聴くことの出来ないチョーキングの演奏で聴かせます。アルバム「The Poll Winners」ではリラックスした雰囲気の「Satin Doll」ではフレーズのリズムとコード演奏が素晴らしい。

この手の曲のアドリブ演奏はダサくなりがちですがこの演奏はカッコイイです。そしてゆったりとしたテンポの「It Could Happen to You」での典型的ジャズフレーズは聴き取りやすく参考になります。その他ジャムセッション人気の曲「On Green Dolphin Street」「You Go to My Head」もあります。

 

Jimmy Raney
「Duets」

ジャズスタンダード曲の名盤という意味で特に紹介したいのが、Jimmy Raneyです。息子のDoug Raneyとのデュオアルバムでジャムセッションの人気曲満載のアルバムですが、ウォーキングベースやハーモナイズドベースラインなどの演奏はほとんどありませんが、ギターの伴奏の勉強には最高のアルバムなので機会があれば是非聴いてみて下さい。

収録曲は「Have You Met Miss Jones?」、「My One and Only Love」、「Invitation」、「Days of Wine and Roses」、「Oleo」、「My Funny Valentine」その他。
 
「Nardis」

こちらもDoug Raneyとのデュオ演奏で「There Will Never Be Another You」が聴けます。コンピングのお手本アルバム。

「Visits Paris Vol.1」  「Visits Paris Vol.2」
 
Jimmy Raney のVisits Paris シリーズVol.1とVol.2では彼のクールで個性的なギターがジャズスタンダード曲で楽しめます。「Visits Paris Vol.1」

「Visits Paris Vol.1」収録曲「Stella By Starlight」「You Go To My Head」「Yesterdays」「There Will Never Be Another You」「Body And Soul」

「Visits Paris Vol. 2 」収録曲「Everything Happens To Me」「Have You Met Miss Jones」「Love For Sale」「Night And Day」

「LIVE IN TOKYO 1976」

こちらのアルバムに関しては以下の通りどれも聴きたいと思えるような曲が収録されており、選曲がジャズギター初心者向けジャズスタンダード曲の名盤といえるようなアルバムです。

1.Just Friends 2.How About You 3.Darn That Dream 4.Anthropology 5.Watch What Happens 6.Autumn Leaves 7.Stella By Starlight 8.Here’s That Rainy Day 9.Cherokee 10.Groovin’ High 11.Blue ‘N’ Boogie

Jimmy Raneyはジャズスタンダード曲のアルバムが多くありますのでここでは全て紹介しきれませんが、是非皆さんも探してみて下さい。

 
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Jim Hall

「Undercurrent」

Bill Evansとのデュオアルバムでジャズスタンダード曲の名盤。1曲目の「My Funny Valentine」ではJim Hallのハーモナイズドベースラインが堪能出来ます。その他「I Hear a Rhapsody」「Darn That Dream」が収録。
 
「Alone Together」

こちらもRon Carterとのデュオアルバムでジャズスタンダード曲の名盤です。収録曲は「St. Thomas」「Alone Together」「I’ll Remember April」「Softly, As in a Morning Sunrise」「Autumn Leaves」など。管楽器など、他の楽器のミュージシャンがリーダーのアルバムにJim Hallが参加している素晴らしいアルバムが沢山ありますので、是非探してみて下さい。

 

Grant Green

「Standards」

Grant Greenの演奏はシングル・ノート主体での演奏と時折見せるバップフレーズのバランス、そして単音を伸ばすタイミングが絶妙で参考にしてもらいたいギタリストの1人です。

アルバム「Standards」の収録曲は「I’ll Remember April」、「You and the Night and the Music」、「All the Things You Are」、「I Remember You」その他。
 
「I Want to Hold Your Hand」

勢いのあるテンポの「Speak Low」でのGrant Greenらしい演奏はお勧めです。ゆったりとしたリズムの「Stella By Starlight」とボサノバ曲「Corcovado」も是非聴いてみて下さい。

 
ここで紹介した全てのギタリストは参考にするべき素晴らしいジャズギタリストばかりです。自分の好きなギタリストの演奏するジャズスタンダード曲を探すことはとても楽しいですし、よい演奏に出会えた時は本当に興奮します。

今回はジャズギター初心者向けのジャズスタンダード曲のアルバム紹介としてジャズギタリストのアルバムを紹介していますが、機会があれば最近のジャズギタリストも紹介したいと思います。



ジャズギターのアルペジオ練習




アルペジオはジャズギターを演奏する上で基礎的な練習となりますが重要な練習でもあります。アルペジオとは具体的には何かのスケールを1音飛ばしに演奏して1度、3度、5度、7度とコードの重要な音だけを単音で演奏する事です。

なぜジャズギター演奏者にとってアルペジオ練習が重要かと言うと、アルペジオでスケールの重要な音を覚えて、アルペジオでそのコードのサウンドを単音で表現するからです。

例えば“コード・チェンジ”の表現はチャーリー・パーカーなどのビバップのジャズミュージシャンたちに高度な技術で演奏された事が始まりですが、アルペジオはコードを繋げる前の段階の、コード自体の素材の部分表現となります。

演奏者はコードに合ったスケールを使用されると思いますが、横の動きはどうしてもコード感が薄くなってしまいます。スケールは横の動きでコード感が弱く、そしてアルペジオは縦の動きでコード感が強いです。

特にソロでの演奏や、デュオ~トリオなど、演奏人数が少ない場合などは各コードを単音で表現するにはアルペジオ練習は効果的な練習方法となります。

アルペジオを練習する事によってスケールの重要な音が覚えられるので、スケール演奏でコード感は薄くなっても、例えば音を伸ばしたり目立つところでアルペジオの中の音を使用するとコード感が出る演奏が出来ます。

最初は音楽的なことは全く気にせずに各コードのルートから練習を始めますが、ジャズのアドリブ演奏時にはこんな演奏をするのか?という疑問が出てくるかもしれません。(私が初心者の頃はそう考えていました)

しかしアルペジオ練習の目的は単音でコード感を出す事と、視覚的にポジションを覚える事、そしてサウンドを耳で覚える事です。この事は常に意識して下さい。

お勧めのアルペジオ練習方法

お勧めの練習方法としては、Cのキーから始める事はせずにいきなり何かのジャズスタンダード曲でアルペジオ練習する事です。私は律儀にCのキーの2-5-1のアルペジオから始めましたが遠回りだったような気がします。

ジャズスタンダード曲でアルペジオ練習する事は結果的にアルペジオ練習だけではなく曲を覚える練習にもなり一石二鳥です。ですので何かスタンダード曲を覚えたいと思ったらその曲でアルペジオ練習する事をお勧めします。

スタンダード曲を習得する場合は、ルートから上行のアルペジオから初めて7度から下降のアルペジオやその他など、決まった練習方法も考えておくと良いかもしれません。

アルペジオも練習方法を考えれば、弾く度数の順番を変えるだけでかなりのバリエーションが出来上がると思います。

指板上のポジション

ジャズギターを弾く上で考えなければならないのはポジションの事です。基本的に何指を何フレットに置くかという事を考えて演奏するのが良いと思います。

つまり枯葉であれば、最初のCm-F7-Bbであれば、人差し指は5F、中指は6F、薬指は7F、小指は8Fと基本の場所を決めてしまうという事です。もちろんここのコード進行のところは全てという事ではなく、1~2小節分のフレーズその時だけです。

フルアコのジャズギターでは使用される指板は3Fからせいぜい15Fくらいかと思います。その間で基本となる指の置き場所を決めますが、一番ギターがよく鳴るフレットは3F~12Fあたりではないでしょうか。

もちろん1Fあたりや15F以上も使用される事もありますが、このあたりは個人の好みでしょう。ちなみに使用してはいけないという事ではなりませんが、ジャズギターではあまり開放弦を使用している方を見かけません。

ジャズではFのキーやBb、Ebのキーの曲が多いので、それらのキーで3F~12Fのフレットを使用する事が多いような気がします。

ギターという楽器特有の弾く場所によって同じ音程でも音色が違うところなども考慮して練習する事はとても大切な事だと思います。個人的にギターの音色の事はいつでも意識していますし、いつも良い音で演奏したいものです。

アルペジオ練習する時に意識する事

指を置く基本の場所を決めたら各コードのルートがどこにあるのかを意識してみて下さい。練習を続けていれば最終的には瞬間的に全ての度数がどこにあるのかという事が把握出来るようになると思いますが、最初は各コードのルートだけで構いませんので意識してみて下さい。

例えばメジャーコードもしくはセブンスのアルペジオであれば6弦のルートのポジションに中指が使用され、マイナーコードであれば6弦のルートのポジションに人差し指、もしくは小指が使用されるかと思いますが、慣れてくると解決のコードのルートが考えなくとも先読みしている状態になります。

この状態になると解決コードに移る前にその時の状況に合わせたフレーズを事前に考えられますし、移った瞬間にフレーズを弾くことが出来ます。



アルペジオの繋げ方

最初は各コードのルートから始めるアルペジオを練習しますが、次のステップとして、それらのアルペジオを滑らかに繋げる事を考えます。あるコードから別のコードに移る時のアルペジオは3度と7度がキーポイントになります。

例えば先ほども出ましたが、枯葉のCm-F7-Bbのところであれば、Cmの7度の音からF7の3度は半音階で滑らかに繋げられますし、F7の7度の音からBbの3度へは半音階ですのでこれも滑らかに繋げられます。

そういった感じで進行する前と後のコードの3度と7度は滑らかに繋がる事が多いです。この練習はガイドトーンといってコードの2音を練習する方法があるのですが、ガイドトーンの練習を併用するとより理解が深まると思います。

順番的にジャズギター初心者の頃はルートを意識したアルペジオ練習で、それが十分に演奏出来るようになったら、次に3度と7度を意識したアルペジオ練習となります。3度と7度を意識したアルペジオ演奏に関しては徹底的に練習する事をお勧め致します。

アルペジオ練習をアドリブ演奏に生かす方法

アルペジオ練習の最後にはいろいろなパターンを練習し、リズムを変えてたとえアルペジオだけでもかっこいいジャズらしい演奏が出来るようになるようになれるように工夫して音楽的に聴ける練習になれればそれ自体がアドリブ演奏の素材の一部になると思います。

練習(演奏)のアイデアとしてはモチーフの使用があります。同じ音の並びのままリズミックに演奏されるものですが、たとえコードが変更しても同じモチーフのまま演奏すると、アドリブ演奏にまとまりが出ます。

お勧めのアルペジオ練習方法を纏めると、何かのスタンダード曲を題材に、各コードのルートからアルペジオ練習を始める。十分に慣れたら開始する音の度数を変更したり、音の順番を変更して練習。

そして次にリズムを工夫して変更を加える。その他同じモチーフで演奏し続ける。最終的には“音楽的に聴けるアルペジオ練習”といった感じです。

加えて、アルペジオの素材をそのままコードに当てはめるのではなく、例えば枯葉でのCmの時にEbメジャーのアルペジオやGmの時にBbメジャーのアルペジオといった具合で、瞬間的に別のコードを想定して演奏するのですが、そこまで出来れば演奏の幅はかなり広がると思います。

特に2-5-1のひとまとまりのフレーズの流れから別のコードへ移動するとき、あるいはポジションをローポジションからハイポジションに変更したい時などで別のコードを想定してアルペジオを使用する時など、選択肢が多ければ多いほど思った通りの演奏が出来ると思います。

アルペジオ練習の練習期間の目安はレパートリーにしようと練習しているスタンダード曲の譜面を見ないで演奏出来るまでです。ジャズスタンダード曲の演奏経験にもよりますがすぐに慣れると思います。


ジャズギター初心者お勧めの曲




ジャズギターを始めたばかりのジャズギター初心者の方に勧めのジャズスタンダード練習曲は、例えばコード進行が簡単な曲や、単純に曲を聴いてみてテーマのメロディーやコード進行の好みで選ぶとか、自分の好きなジャズギタリストが弾いている曲などが考えられると思います。

コード進行が簡単なジャズスタンダード曲(ブルース進行曲)

コード進行が簡単なジャズスタンダード曲でなかでも初心者の方にお勧めなのがブルース進行曲です。

ブルース進行曲は12小節で構成される曲で、例えば曲名で言えばチャーリー・パーカー作曲の「Now’s The Time」や「Billie’s Bounce」、セロニアス・モンク作曲の「Straight No Chaser」がジャムセッションでよく演奏されてブルース進行曲としては有名です。

ブルース進行曲のキーはブルースやロックギターなどの場合、開放弦が使用出来るのでEやAのキーが多いのではないでしょうか。しかしジャズの場合は通常Fのキーで演奏されます。その他ではBbキーのブルース進行曲というのもありますが、ジャズのジャムセッションでブルースといえば通常はFキーです。

もしロックギターなど、他のジャンルのギターを弾いてきたジャズギター初心者の方は、ブルース進行曲のコード進行は馴染みがあると思いますしロックギターで使用されるペンタトニックスケールを使用するという事もジャズギター初心者の方にお勧めできる理由です。

ジャズのブルース進行曲は基本的にはスリーコードのブルースと同じ進行ですが、ジャズの場合ドミナントモーションが使用され少し複雑なコード進行になります。

ドミナントモーションとは不安定な響きのドミナント7thコード(Ⅴ)が、安定した5度下のコード(Ⅰ)に解決する事で例えばFブルース曲の場合はC7-Fといった具合です。

なぜジャズではこのような事が意識され演奏されるかというと、スリーコードでペンタ一発という演奏よりも、ジャズではドミナントモーションなどの緊張から緩和というコード進行がよく見られ、それらは2-5-1のドミナントフレーズとして演奏されるからです。

ではなぜジャズでドミナントモーションが使用されるかというと、ジャズの歴史的な話しは別の機会に譲りますが簡単に言うと、チャーリー・パーカーなどのビバップジャズのミュージシャンたちに高度な技術で“コード・チェンジ”が即興で演奏された事が始まりです。

逆に言うとシンプルなコード進行でブルースギタリストなどのペンタ一発の感情の入った演奏はギタリストにとっては大変魅力的で素晴らしい演奏だと思いますが、そういった演奏はジャズでは見られません。

話しを戻します。ジャズではセカンダリードミナントが頻繁に使用されます。セカンダリードミナントはトニック以外の各ダイアトニックコードに一時的なドミナントコードを設定する事をいいます。(ただし〇m7b5のコードは除く)

つまりセカンダリードミナントはジャズミュージシャンがスタンダード曲の中でドミナントモーションがより多く使用出来るように設定されるものです。

ちなみにセカンダリードミナントはオルタード系、ミクソリディアン系、リディアンフラット7th系の3つに分類され使用されます。

コード進行が簡単なジャズスタンダード曲(枯葉)

次にジャズギター初心者の方に勧めの曲は定番の『枯葉』です。枯葉のコード進行は非常にシンプルでメジャーのⅡm7‐Ⅴ7‐Ⅰ進行と、マイナーのⅡm7b5‐Ⅴ7‐Ⅰmという進行が続く曲です。

それ故に枯葉はメジャー、マイナーのⅡ‐Ⅴ‐Ⅰ進行のよい練習になるのでジャズギター初心者にはよく課題曲に取り上げられます。加えてメロディーも各コードの3度の音が使用され分かりやすいと思います。

ジャズスタンダード曲のキーに関して

枯葉のキーはBbですが、なぜBbキーかというと、ジャズのスタンダード曲ではBbとEbのb系のキーが数多く存在しますが、それはジャズが管楽器中心に発展して来た音楽だからです。

移調楽器に関しての詳しい説明は割愛致しますが、簡単にいえばトランペット、テナー・サックスはBbキーの曲が楽に演奏出来て、アルト・サックス、バリトン・サックスは楽にEbの曲が演奏で出来ます。ギターで演奏されるブルースの曲は楽に演奏できるので、#系のキーが多いという事です。

枯葉のBbキーでのメジャー、マイナーのⅡ‐Ⅴ‐Ⅰ進行は、Cm-F7-Bbというメジャーの2-5-1進行と、Am-D7b9-Gmというマイナーの2-5-1という事です。

『枯葉』の名盤

参考で枯葉のお手本的アルバムを探したい方はキャノンボール・アダレイの「Somethin’ Else」をお勧め致します。ジャズのジャムセッションで意識されるのはまずこの枯葉ではないでしょうか。

「Somethin’ Else」の名義は契約の問題でキャノンボール・アダレイとなっておりますが実質のリーダーはマイルス・デイヴィスです。このアルバムでマイルスはシャンソンの名曲、”枯葉”に見事なアレンジを施して”枯葉”の名演が生まれました。

ジャズギター初心者の方がジャムセッション定番曲のお手本的アルバムを探すのであればマイルス・デイヴィスで探してみてみる事をお勧めします。



ジャズのジャムセッション定番曲

ジャズのジャムセッション定番曲の話しが出たところで、ジャズスタンダード曲のテーマのメロディーやコード進行の好みで選ぶという事ですが、一般的に定番曲は以下のリストになると思います。

ご自身の使用楽器によって、あるいは経験(地域)によって他にも曲はあると思いますが、これらは個人的によくジャムセッションで演奏した(聴いた)と思う曲で個人的な経験に基づく見解です。

Autumn Leaves
All the Things You Are
Beautiful Love
But Not For Me
Bye Bye Black Bird
Four
The Days Of Wine And Roses
I Lone You
I’ll Close My Eyes
It Could Happen To You
Fly Me To The Moon
On Green Dolphin Street
Just Friends
Softly As In A Morning Sunrise
Someday My Prince Will Come
Stella By Starlight
There Is No Grater Love
There Will Never Be Another You

ジャズギター初心者にお勧めの練習曲という趣旨であるので、その他考えられるボサノバ曲、バラード曲は除外しています。個人的にジャズギター初心者が練習曲として選ぶスタンダード曲の候補としては、恐らくこれらの曲だけで十分だと思います。

これらのスタンダード曲をYouTubeなどで探して、聴いた感じで好きな曲を選択して練習してみるのも良いと思いますし、好きなジャズギタリスト(もしくは有名ジャズギタリスト)でアルバムを探してみるのも良いかもしれません。

好きなギタリストのアルバム

最後は好きなギタリストのアルバムで練習曲を探すという視点で考えてみましょう。この記事を読んでいるジャズギター初心者の方は既に上記のジャズのジャムセッション定番スタンダード曲のリストを知っているので、選ぶ曲で迷う事はないと思います。

好きなジャズギタリストのオリジナル曲を覚えて練習するのも良いですが、ジャズギター初心者が練習する曲は、機会があればジャムセッションに参加するかもしれませんし、やはりジャムセッション定番曲が良いと思います。

ただしジャズギタリストのアルバムでジャズスタンダード曲を探して勉強する場合はアレンジが施されている場合が多いと思います。

どのようなアレンジのコードでどのようなアドリブ演奏がされているかという事が明確に分かった方が勉強になるので、耳コピー出来れば理想的ですが難しい場合はアドリブ演奏を採譜されたトランスクリプションの本の使用をお勧め致します。

アレンジされているところはアレンジに関して勉強になりますし、アレンジされていないところはそのフレーズを自分の演奏に取り入れることが出来るのでよいお手本になるかと思います。

以上がジャズギターに初心者お勧めの曲でした。ジャズギター初心者の方々にとっては練習曲の選択は難しい問題かと思いますが、この記事が参考になれば幸いです。


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