[ジャズギター初心者向け] On Green Dolphin Streetアドリブ演奏




ジャズのジャムセッションでは大変人気のある曲On Green Dolphin Street(作詞:Ned Washington/作曲: Bronislau Kaper)ですが、この曲は1947年に映画「Green Dolphin Street」邦題『大地は怒る』のテーマ曲として使用されました。

その後Jimmy Dorsey Orchestraの演奏によってGreen Dolphin Streetは人気になったのですが、のちにマイルス・デイビスのアルバム「1958マイルス」でも取り上げられました。

マイルスのこのアルバム以降On Green Dolphin Streetはジャズミュージシャンに演奏されるようになりジャズスタンダード曲になったといえます。ちなみに「1958マイルス」(1958年)は1955年から1958年にセッションを中心としたアルバムです。

On Green Dolphin Streetは最初のEbからGbへのコード進行、そしてこの曲の特徴でもある、5小節目からのFから半音ずつ下がるパートや、リズムがパートによってラテンと4ビートが入れ替わるのでジャズギター初心者の方にとっては少しハードルが高い曲かもしれません。

後ほどお勧めアルバムでも紹介しますが、まず有名ジャズミュージシャンのOn Green Dolphin Streetを聴いてみる事をお勧めします。

曲の構成

曲の構成はA-B-A-C各8小節の合計32小節で、曲のキーはEbです。コード進行は以下の譜面の通りです。ジャズのジャムセッションでは通常Aパートのリズムはラテン、そしてB、Cパートは4ビートのリズムで演奏されます。

[補足]On Green Dolphin Streetの3小節目ですが、黒本ではGb/Eb、スマホアプリの「iReal Pro」、青本ではEbmとなっていて違いがあります。

そしてアドリブ演奏が終わる時(演奏者交代時)の時だけ、最後の4小節はそのまま繰り返しされます。つまりアドリブ奏者交代の時だけCのところは12小節となり、

Fm7 – Dm7-5/G7 – Cm – Am7-5/D7
Gm7/C7 – Fm7/Bb7 – Eb – Fm7/Bb7
Gm7/C7 – Fm7/Bb7 – Eb – Fm7/Bb7

という流れになります。こちらは黒本(楽天リンク)にも書かれています。
On Green Dolphin Street



コード進行とアナライズ

On Green Dolphin StreetではⅠからⅢbになり、5小節目からはF(Ⅱ)から半音ずつ下がっていきます。そして8小節目から9小節目はFm(Ⅱm)へのマイナーのドミナントモーション、10小節目から11小節目はEbへのⅡ-Ⅴ-Ⅰです。

13小節目からはEbへのⅡ-Ⅴ-Ⅰ。26小節目からCm(Ⅵm)へのドミナントモーション、28小節目からGm(Ⅲm)へのドミナントモーション、30小節目からはEbへのⅡ-Ⅴ-Ⅰとなります。

一般的にはメジャーのドミナントモーション(Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ)ではミクソリディアンスケール、オルタードスケール、そしてマイナーコードへの解決ではオルタードスケール、ハーモニックマイナーパーフェクトフィフスビロウ(HP5↓)が使用される事が多いです。

以上コード進行とアナライズでしたが、最初のEbからGb と、5小節目からの半音ずつで下がるところを除けばOn Green Dolphin Streetがシンプルなコード進行です。逆を言えば最初のEbからGb と5小節目からの半音進行がOn Green Dolphin Streetの特徴という事です。

アドリブ演奏

まずは2音を使用したアドリブ演奏の練習方法の紹介となります。こちらはシンプルですがこういった基礎練習がアドリブ演奏の時には役に立つと考えています。

次の段階ではこれらの素材を主にしたアドリブ演奏にスケールの使用で肉付けしていくというような事も考えられますし、2音にプラスしてルート音など1音加えて演奏する場合にはデュオ演奏での伴奏にも役立ちます。
On Green Dolphin Street_2音


次はアルペジオを使用したアドリブ練習です。この練習の目的ですが、各コードの大切な音、ルート、3度、5度、7度などの指板上のポジションとコード進行のサウンドを覚えるという事が目的となります。

十分に練習された後は曲進行が体で覚えられるので、ロストする事も少なくなると思いますし、コードの大切な音が指板上のどこの場所にあるのかという事が瞬時に認識できるようになります。

On Green Dolphin Street_アルペジオ

On Green Dolphin Streetの歌詞

On Green Dolphin Streetの歌詞 (作詞:Ned Washington / 作曲: Bronislau Kaper)

愛しきひと,そしてあの素晴らしい日に
恋がやってきた,私の心にとどまるつもりで
グリーン・ドルフィン・ストリートがその舞台を提供してくれた
忘れることの出来ない夜のための舞台を
これらの瞬間が過ぎ去ったとしても
思い出は私の心の中で生き続けている
私が見つけた愛を思い起こすとき
グリーン・ドルフィン・ストリートにキスしてしまうほど

Lover, one lovely day,
Love came, planning to stay.
Green Dolphin Street supplied the setting.
The setting for nights beyond forgetting.
And through these moments apart,
Memories live in my heart.
When I recall the love I found on,
I could kiss the ground on Green Dolphin Street.


お勧めアルバム

「1958 Miles」


On Green Dolphin Streetといえばやはりマイルスのこのアルバムは外せません。冒頭にも触れましたがマイルスのセッションを中心としたアルバムで Julian “Cannonball” Adderley(as)、John Coltrane(ts)、Bill Evans(p)、Paul Chambers(b)、Jimmy Cobb(ds)が参加、収録曲はStella by Starlight、Love for Saleなどあります。

 

「On Green Dolphin Street」


1977年発表のBill Evansのアルバム「On Green Dolphin Street」も名盤です。Loose BlooseだけですがJim Hallが参加している曲もあります。

 

「Gooden’s Corner」


Grant Greenのリーダーアルバム「Gooden’s Corner」では渋いOn Green Dolphin Streetの演奏が聴くことが出来ます。参加メンバーはGrant Green(g)、Sonny Clark(p)、Sam Jones(b)、Louis Hayes(ds)収録曲はOn Green Dolphin Street、What Is This Thing Called Love?、Moon Riverその他です。

 

「The Poll Winners」


Barney Kesselの超名盤「The Poll Winners」ではOn Green Dolphin Streetをはじめ初心者ギタリストお勧めのスタンダード曲Satin Doll、It Could Happen to YouやYou Go to My Headなどが収録されています。

 

「Virtuoso 2」


説明不要のJoe PassのVirtuosoシリーズ第二弾「Virtuoso 2」(1976年)の紹介です。ジャズのソロギターを勉強したい方にはお勧めアルバムです。On Green Dolphin Streetの他に、Giant StepsやMistyなど収録曲が入っています。

 

「Family Fugue」


Bucky PizzarelliとJohn Pizzarelliの親子デュオアルバム「Family Fugue」。全体的に古いスタイルの演奏ですが、ギターデュオなのでウォーキングベースラインやデュオの勉強になると思います。On Green Dolphin Streetの他にはAll The Things You Are、Body And Soul、It Could Happen To You、Stardust、What’s New、Cry Me A Riverが収録されています。

 

「 Live at Bradley’s 1974」


Jimmy Raneyのライブアルバム「 Live at Bradley’s 1974」は残念ながら音質がよくないのですが、ジャムセッションでよくやる曲が多いので初心者お勧めのアルバムです。
収録曲:
1.I Remember You 2.Dancing On The Ceiling 3.How About You 4.I Love You 5.It Could Happen To You 6.Like Someone In Love 7.Indiana/Donna Lee 8.Days Of Wines And Roses 11.Darn That Dream 12.Billie’s Bounce 13.I Remember You 14.Body And Soul 15.Indiana/Donna Lee 16.Out Of Nowhere 17.On Green Dolphin Street

 

「Easy Living」


Joe PassのOn Green Dolphin Streetをもう一枚紹介します。こちらはジャズシンガーElla Fitzgeraldとのデュオアルバム「Easy Living」です。On Green Dolphin Streetではアルペジオとボサノバギター演奏を交互に演奏しています。伴奏も勉強になりますし、なによりElla Fitzgeraldの歌が最高です。その他The Days Of Wine And Roses、Easy Living、Love For Sale、On A Slow Boat To Chinaなど。

 

「Introducing」


Doug Raneyが軽快なテンポでOn Green Dolphin Streetを演奏していますがリラックスした雰囲気で淡々とテクニカルなジャズギターを演奏しています。その他収録曲はMr. P.C.、Someone to Watch Over Me、The End of a Love Affair、I Remember You、Like Someone in Loveなど。

 

「Summertime」


Bireli lagreneとSylvain Lucのデュオアルバム「Summertime」でのOn Green Dolphin Streetですが、アコースティックのサウンドが好みの方はお勧めです。Sylvain LucはフランスのジャズギタリストですがBireli lagreneに引けを取らない演奏をしています。その他の収録曲はSummertime、So What、Spain、My One And Only Love、Wave、All The Things You Are、Someday My Prince Will Comeなど。

 

「Joe Diorio:Live」


Joe Diorio TrioのLiveアルバムです。Joe Diorioと言えばMick Goodrickとのギターデュオアルバム「Rare Birds」が有名で、私も購入しましたがJoe Diorio Trioは教則本も多数出していて彼のリーダー作も数枚あります。このライブアルバムのGreen Dolphin StreetではJoe Diorioらしさが全開で出ています。収録曲:Lover Man、Corcovado、A Child Is Born、Yesterdays、The Night Has a Thousand Eyes。

 

「Rare Birds」


先ほども触れましたがJoe Diorioのアルバムからもう一枚「Rare Birds」をご紹介。このアルバムはMick Goodrickとのギターデュオアルバムです。Mick Goodrickはバークリーの教授でJoe Diorio同様に教則本も出しています。「Rare Birds」はOn Green Dolphin Street、My Funny Valentine、Out Of Nowhereなどのジャズスタンダード曲が収録されているのでそういう意味では初心者の方にお勧めですがギター演奏の内容は中級者向けです。



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