ジャズギターを始めたばかりのジャズギター初心者の方に勧めのジャズスタンダード練習曲は、例えばコード進行が簡単な曲や、単純に曲を聴いてみてテーマのメロディーやコード進行の好みで選ぶとか、自分の好きなジャズギタリストが弾いている曲などが考えられると思います。
コード進行が簡単なジャズスタンダード曲でなかでも初心者の方にお勧めなのがブルース進行曲です。
ブルース進行曲は12小節で構成される曲で、例えば曲名で言えばチャーリー・パーカー作曲の「Now’s The Time」や「Billie’s Bounce」、セロニアス・モンク作曲の「Straight No Chaser」がジャムセッションでよく演奏されてブルース進行曲としては有名です。
ブルース進行曲のキーはブルースやロックギターなどの場合、開放弦が使用出来るのでEやAのキーが多いのではないでしょうか。しかしジャズの場合は通常Fのキーで演奏されます。その他ではBbキーのブルース進行曲というのもありますが、ジャズのジャムセッションでブルースといえば通常はFキーです。
もしロックギターなど、他のジャンルのギターを弾いてきたジャズギター初心者の方は、ブルース進行曲のコード進行は馴染みがあると思いますしロックギターで使用されるペンタトニックスケールを使用するという事もジャズギター初心者の方にお勧めできる理由です。
ジャズのブルース進行曲は基本的にはスリーコードのブルースと同じ進行ですが、ジャズの場合ドミナントモーションが使用され少し複雑なコード進行になります。
ドミナントモーションとは不安定な響きのドミナント7thコード(Ⅴ)が、安定した5度下のコード(Ⅰ)に解決する事で例えばFブルース曲の場合はC7-Fといった具合です。
なぜジャズではこのような事が意識され演奏されるかというと、スリーコードでペンタ一発という演奏よりも、ジャズではドミナントモーションなどの緊張から緩和というコード進行がよく見られ、それらは2-5-1のドミナントフレーズとして演奏されるからです。
ではなぜジャズでドミナントモーションが使用されるかというと、ジャズの歴史的な話しは別の機会に譲りますが簡単に言うと、チャーリー・パーカーなどのビバップジャズのミュージシャンたちに高度な技術で“コード・チェンジ”が即興で演奏された事が始まりです。
逆に言うとシンプルなコード進行でブルースギタリストなどのペンタ一発の感情の入った演奏はギタリストにとっては大変魅力的で素晴らしい演奏だと思いますが、そういった演奏はジャズでは見られません。
話しを戻します。ジャズではセカンダリードミナントが頻繁に使用されます。セカンダリードミナントはトニック以外の各ダイアトニックコードに一時的なドミナントコードを設定する事をいいます。(ただし〇m7b5のコードは除く)
つまりセカンダリードミナントはジャズミュージシャンがスタンダード曲の中でドミナントモーションがより多く使用出来るように設定されるものです。
ちなみにセカンダリードミナントはオルタード系、ミクソリディアン系、リディアンフラット7th系の3つに分類され使用されます。
次にジャズギター初心者の方に勧めの曲は定番の『枯葉』です。枯葉のコード進行は非常にシンプルでメジャーのⅡm7‐Ⅴ7‐Ⅰ進行と、マイナーのⅡm7b5‐Ⅴ7‐Ⅰmという進行が続く曲です。
それ故に枯葉はメジャー、マイナーのⅡ‐Ⅴ‐Ⅰ進行のよい練習になるのでジャズギター初心者にはよく課題曲に取り上げられます。加えてメロディーも各コードの3度の音が使用され分かりやすいと思います。
枯葉のキーはBbですが、なぜBbキーかというと、ジャズのスタンダード曲ではBbとEbのb系のキーが数多く存在しますが、それはジャズが管楽器中心に発展して来た音楽だからです。
移調楽器に関しての詳しい説明は割愛致しますが、簡単にいえばトランペット、テナー・サックスはBbキーの曲が楽に演奏出来て、アルト・サックス、バリトン・サックスは楽にEbの曲が演奏で出来ます。ギターで演奏されるブルースの曲は楽に演奏できるので、#系のキーが多いという事です。
枯葉のBbキーでのメジャー、マイナーのⅡ‐Ⅴ‐Ⅰ進行は、Cm-F7-Bbというメジャーの2-5-1進行と、Am-D7b9-Gmというマイナーの2-5-1という事です。
参考で枯葉のお手本的アルバムを探したい方はキャノンボール・アダレイの「Somethin’ Else」をお勧め致します。ジャズのジャムセッションで意識されるのはまずこの枯葉ではないでしょうか。
「Somethin’ Else」の名義は契約の問題でキャノンボール・アダレイとなっておりますが実質のリーダーはマイルス・デイヴィスです。このアルバムでマイルスはシャンソンの名曲、”枯葉”に見事なアレンジを施して”枯葉”の名演が生まれました。
ジャズギター初心者の方がジャムセッション定番曲のお手本的アルバムを探すのであればマイルス・デイヴィスで探してみてみる事をお勧めします。
ジャズのジャムセッション定番曲
ジャズのジャムセッション定番曲の話しが出たところで、ジャズスタンダード曲のテーマのメロディーやコード進行の好みで選ぶという事ですが、一般的に定番曲は以下のリストになると思います。
ご自身の使用楽器によって、あるいは経験(地域)によって他にも曲はあると思いますが、これらは個人的によくジャムセッションで演奏した(聴いた)と思う曲で個人的な経験に基づく見解です。
Autumn Leaves
All the Things You Are
Beautiful Love
But Not For Me
Bye Bye Black Bird
Four
The Days Of Wine And Roses
I Lone You
I’ll Close My Eyes
It Could Happen To You
Fly Me To The Moon
On Green Dolphin Street
Just Friends
Softly As In A Morning Sunrise
Someday My Prince Will Come
Stella By Starlight
There Is No Grater Love
There Will Never Be Another You
ジャズギター初心者にお勧めの練習曲という趣旨であるので、その他考えられるボサノバ曲、バラード曲は除外しています。個人的にジャズギター初心者が練習曲として選ぶスタンダード曲の候補としては、恐らくこれらの曲だけで十分だと思います。
これらのスタンダード曲をYouTubeなどで探して、聴いた感じで好きな曲を選択して練習してみるのも良いと思いますし、好きなジャズギタリスト(もしくは有名ジャズギタリスト)でアルバムを探してみるのも良いかもしれません。
最後は好きなギタリストのアルバムで練習曲を探すという視点で考えてみましょう。この記事を読んでいるジャズギター初心者の方は既に上記のジャズのジャムセッション定番スタンダード曲のリストを知っているので、選ぶ曲で迷う事はないと思います。
好きなジャズギタリストのオリジナル曲を覚えて練習するのも良いですが、ジャズギター初心者が練習する曲は、機会があればジャムセッションに参加するかもしれませんし、やはりジャムセッション定番曲が良いと思います。
ただしジャズギタリストのアルバムでジャズスタンダード曲を探して勉強する場合はアレンジが施されている場合が多いと思います。
どのようなアレンジのコードでどのようなアドリブ演奏がされているかという事が明確に分かった方が勉強になるので、耳コピー出来れば理想的ですが難しい場合はアドリブ演奏を採譜されたトランスクリプションの本の使用をお勧め致します。
アレンジされているところはアレンジに関して勉強になりますし、アレンジされていないところはそのフレーズを自分の演奏に取り入れることが出来るのでよいお手本になるかと思います。
以上がジャズギターに初心者お勧めの曲でした。ジャズギター初心者の方々にとっては練習曲の選択は難しい問題かと思いますが、この記事が参考になれば幸いです。