ジャズギター4つ刻みのバッキング



ジャズギターの4つ刻みバッキングとは
4つ刻みバッキングとは、1拍ごとにピックでコードを刻むことです。ビックバンドでもコンボでも演奏されますが、いずれもリズム楽器としての4つ刻みの役割は曲に推進力を与える事です。私が想定する4つ刻みの演奏のバンド編成はベースレスになります。

技術的には音を短く切ってリズミックに弾く方法から、滑らかにスウィングさせて演奏する方法など様々ですが、ギターの4つ刻みバッキングはシンプルだけに非常に難しい演奏です。

スウィングとはイーブンなリズムとは違い、3連符から発生したシャッフルのリズムで、ほとんどイーブンに近いスウィングから、シャッフルで演奏された強いスウィング感のリズムまで感覚的に演奏されますが、傾向としてテンポにも影響されテンポが早ければ早いほどそのリズムはイーブンに近くなります。

例えばジャズで見られる譜面では8分音符で書かれたとしていてもイーブンでは演奏されずに、スウィングのリズムで演奏される事が通常となるので、ジャズギターで4つ刻みのバッキングも同様にスウィングで演奏されます。

しかし演奏で注意が必要なのは、ベーシストが同じ4分音符で演奏しているという事と、4つ刻みのバッキングはコードにはベース音が入っている為、特に少人数のコンボではベーシストとの演奏には気を付けなければなりません。

4つ刻みバッキングの演奏方法
4つ刻みバッキングは一定のリズムでコードをスウィングのリズムで刻むという事ですが右手に関して、例えば肘を固定させ手の動きは一定にピッキングする必要があります。

手首の動きに関しては手首を固定させて腕を動かして弾くパターンと、腕はあまり動かさずに手首を主に動かして弾くパターンの2種類になると思います。

ピッキングの速さですが、ゆったりとした感じで弾く場合と早く弾く場合、当然ですが音が違ってきます。そもそも一定のリズムで演奏する事が難しいので、速さを調整する事は難しいと思います。速さはどちらか決めた方がよい結果が得られると思います。

コードを弾くピッキングの場所は通常弾いている、例えばピックアップの上でもよいですが、これは好みの問題になるかと思いますが、個人的には17F~あたりの指板の上で演奏する4つ刻みバッキングのサウンドが好きです。

そしてピックを弦に当てる角度ですが、斜めに当てる場合と弦と並行に当てる場合も音が違ってきますし、ピックで弾く方向もそのまま下に手をおろす場合と、斜めに下す場合も違ってきます。

つまりそのまま下ろす場合とは、フレットに対して平行にそのまま下に弾くという事で、斜めに弾くとは例えば6弦の時は17Fあたりにピックがあり、弾き下ろして1弦の時には20Fあたりにピックが移動しているという事です。


演奏に関してはそのまま4つ刻みでコードを弾く場合もありますし、時にブラッシングを入れる場合もあります。毎回入れる事はないと思いますが、スゥィング感を出す為に使用されるブラッシングの効果は大きいので研究する価値はあると考えています。

ジャズギターでの4つ刻みのバッキングは一見右手が重要かと思えますが、左手に関しても右手同様にスウィング感という観点で大切な要素となります。実際4つ刻みバッキングに関しては左手の方が重要で難しい技術だと思います。

コードを押さえる指はただ4つ刻みでコードを弾く為に押さえるのではなく、2つ目の8分音符で瞬間的に弦から指を離してミュートを挟みながら演奏すると推進力が出ます。練習していると逆に音を出している時より、音が出ていない時をどのように表現するかという事の方が重要に感じます。

左手だけでリズムを出すにはかなり練習が必要かと思いますが、特にベースのいない場合の少人数での編成で演奏する時にはそれだけの価値があると思います。

4つ刻みバッキングを演奏する時のイメージですが、上下の動きというよりも、例えば円を描くような感じで、丸く滑らかにスゥィングのリズムを表現する演奏が望ましいです。

お勧めアルバム

Freddie Green

4つ刻みのバッキングで有名なギタリストはFreddie Greenです。もし機会があれば彼の唯一のリーダー作のアルバム「Mr. Rhythm Freddie Green」を聴いてみて下さい。ビックバンドでのお手本のようなジャズギターの4つ刻みのバッキングが聴く事が出来ます。

Freddie Greenはカウント・ベイシー・オーケストラでリズムギターを担当してソロをとらずにひたすらギターでリズムを刻み、ミスターリズムと呼ばれています。

「Mr. Rhythm Freddie Green」

演奏メンバー:
Freddie Green(g)
Joe Newman(tp)
Henry Coker(tb)
Al Cohn(ts)
Nat Pierce(p)
Milt Hinton(b)
Osie Johnson(ds)
Jo Jones(ds)

収録曲:
1.Up in the Blues
2.Down for the Double
3.Back and Forth
4.Free and Easy
5.Learnin’ the Blues (Delores Vicki Silvers)
6.Feed Bag
7.Something’s Got to Give
8.Easy Does It (Sy Oliver, Trummy Young)
9.Little Red
10.Swinging Back
11.A Date with Ray
12.When You Wish Upon a Star (Leigh Harline, Ned Washington)


もう少しクリアな4つ刻みを聴きたい方は「Four Brass One Tenor」をお勧め致します。Freddie Greenの素晴らしいバッキングを聴く事が出来ます。

「Four Brass One Tenor」

演奏メンバー:
Al Cohn(ts)
Bart Valve, Bernie Glow, Joe Newman, Joe Wilder, Nick Travis, Phil Sunkel(tp)
Nick Travis(vtb)
Dick Katz(p)
Freddie Green(g)
Buddy Jones(b)
Osie Johnson(ds)

収録曲:
1.Rosetta
2.Song Is Ended, The
3.Linger Awhile
4.Every Time
5.Haroosh
6.Just Plain Sam
7.I’m Coming Virginia
8.Cohn Not Cohn
9.Little Song, A
10.Foggy Water
11.Sugar Cohn
12.Alone Together



John Pizzarelli

For Centennial Reasons: 100 Year Salute To Nat King Cole
One Night With You: The John Pizzarelli Collection

John Pizzarelliの4つ刻みバッキングは心地良いスウィング感で参考にすべきギタリストです。彼のバッキングは全くベースの邪魔にならずに良い雰囲気を出しています。

 
 

Jim Hall

「Interaction」

Art Farmerの「Interaction」でのJim Hallの4つ刻みバッキングはJohn Pizzarelliとは違う良さがあります。1曲目の酒バラを聴いてみて下さい。テーマ時のJim Hallの4つ刻みバッキングとWalter Perkins のドラム、そしてSteve Swallowによるベース演奏の絡み方、全てが参考になります。

Jim Hallの4つ刻みバッキングとアドリブ演奏が始まった時の伴奏の対比、そしてその上でArt Farmerのフリューゲルホーンの素晴らしい音色と演奏で素晴らしい酒バラが聴けます。

「Interaction 」
演奏メンバー:
Art Farmer(fh)
Jim Hall(g)
Steve Swallow(b)
Walter Perkins(ds)

収録曲:
1.Days of Wine and Roses
2.By Myself
3.My Little Suede Shoes
4.Embraceable You
5.My Kinda Love
6.Sometime Ago



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