今回はジャズスタンダード曲、It Could Happen To Youのアルペジオ基礎トレーニングの紹介です。It Could Happen To Youはジャズのジャムセッションでよく演奏される曲で、比較的ゆったりしたテンポで演奏される場合が多いので、ジャズギター初心者の方にはお勧めの練習曲です。
It Could Happen To Youは、Jimmy Van Heusen作曲、Johnny Burke作詞(1943年)の曲で、映画「アンド・エンジェルス・シング」（1944）で使用されました。それ以降多くのミュージシャンに演奏され、今では人気のジャズスタンダード曲の1曲となっています。
コード進行とアナライズ
It Could Happen To Youのコード進行を4小節ずつ解説すると、最初はキーのEbから始まり、Ⅱm(Fm7)へのドミナントモーション、Am7b5-D7b9からEbへと進みます。
使用出来るスケールはEbのところはEメジャースケール、FmはFドリアンスケール、そして〇m解決の2-5-1フレーズと書いてある箇所は、m7(b5)のところはロクリアンスケール、7thコードはオルタード、もしくはハーモニックマイナー・パーフェクト5thビロウスケールの使用が一般的です。
Am7b5-D7b9からEbに進行するところですが、本によってコードが違いますので留意して下さい。私の場合は感覚的にⅢm(Gm)への解決ドミナントモーションぽく弾く場合もあります。
次の4小節はEbからAbへ進行して、そして今度は1小節単位ですがⅡm(Fm7)解決のドミナントモーションで、AbのところはAbリディアンスケールが使用可能です。
次の4小節はFm7からAm7b/Db7ですが、キーのEbからみてⅣのサブドミナントマイナーのⅣm7(Am7)から、Ⅶ7(Db7)へ進んだ後にEbへ進行します。この進行はIt Could Happen To Youに限らずジャズスタンダード曲ではよく出てきますので是非この機会に覚えて下さい。
私もそうでしたがジャズギター初心者にとって、Ⅳm7-Ⅶ7-Ⅰというのはどういう事かと悩むと思いますが演奏可能な理論的解釈を1つ紹介します。
Ⅱm(Fm7) は同じサブドミナント系のコードであるⅣ(Ab)と置き換えてアドリブは可能ですが、もしⅡm(Fm7)をⅣ(Ab)と仮定するならばそのコード進行は、Ab-Abm7となり、次のⅣm7（Abm7）への進行がスムーズになります。
加えて、もし次のEbを同じトニック系のコードであるGm7と仮定した場合は、オリジナルの、Fm7-Am7b/Db7-Ebというコード進行上で、Ab-Abm7-Gm7というアドリブ演奏が考えられます。
その他Db7の裏コードのG7を使用したCm解決ドミナントモーション的フレーズなど、演奏出来うる解釈は他にもありますので是非ご自身で研究してみて下さい。
次の4小節はCm-F7-Fm7-Bb7の箇所は、シンプルにCm-F7をEbと考えて演奏し、Fm7-Bb7でEbへの2-5-1のフレーズを演奏します。
以上、It Could Happen To You の1コーラス目のコード進行とアナライズでしたが、2番の最後の4小節は見ての通り典型的な2-5-1進行で締めとなっています。しかし全ての2-5-1を演奏するとしつこくなるので参考程度にしてバランスを考慮して演奏しましょう。
It Could Happen To Youアナライズ
It Could Happen To Youを題材にアルペジオの基礎トレーニングの紹介ですが、今回の練習例の譜面は各コードのルートから開始、そして3～5フレットを使用して練習するパターンを掲載しています。
アルペジオを練習するときに意識する事はフレーズそのものではなく、初心者の方であればルート、3度、5度、7度のポジションを指板上で覚える事と、そのコードとコード進行のサウンドを耳で覚える事、そしてスケールの中の大切な音を覚える事です。
スケールの中の大切な音というのは同じコードでアルペジオとスケールを交互に弾いてみてもらえれば分かると思いますが、アルペジオはスケールの1つ飛ばしで構成されています。
それはそのコードの特徴ですので、アルペジオを弾くという事はコードを弾く代わりに単音でコードを表現(演奏)しているようなものです。アルペジオの練習はスケールの中の大切な音を覚えることでもあります。
このような基礎アルペジオ練習をしっかりとトレーニングするとデュオやトリオなど、演奏者が少なければ少ないほど練習の効果が出ると思います。
It Could Happen To Youアルペジオ
ご希望の方には”It Could Happen to Youアルペジオ基礎トレーニング”のPDF譜面を、BOOTHにて無料プレゼント中です。
＞＞BOOTHでダウンロード＜＜
「It Could Happen To You」(作詞：Johnny Burke / 作曲：Jimmy Van Heusen)
もし今回It Could Happen To Youのアルペジオ基礎トレーニングを通じて、この機会にこの曲をご自身のレパートリーにしようとしている方向けに歌詞も掲載します。どのような歌詞で歌われているのか確認してみて下さい。もしかしたら違った印象になるかもしれません。
It Could Happen To You (作詞 Johnny Burke)
あなたの心を隠したり、夜は夢に鍵を掛けて
そんな事があなたにも起こるかも
つまづくかもしれないから星の数は数えないで
誰かがため息をつくとよろめいて転んだり
春には眠れなかったり教会の鐘の音が鳴って走ったり
そんな事があなたにも起こるかも
あなたの腕に抱かれたらと思っただけなのに、
わたしに起こったこと全てが驚き
そんな事があなたにも起こるかも
Hide your heart from sight, lock your dreams at night
It Could Happen To You
Don’t count stars or you might stumble
Someone drops a sigh and down you tumble
Keep an eye on spring, run when church bells ring
It Could Happen To You
All I did was wonder how your arms would be
And it could happen to me
いわゆるマラソン・セッションアルバムの1つ、Miles Davis QuintetのRelaxin ‘は、1956年に録音、1958年リリースのスタジオアルバムです。メンバーはMiles Davis, John Coltrane, Red Garland, Paul Chambers, Philly Joe Jonesです。Miles Davis QuintetのIt Could Happen To Youはイントロからエンディングまで参考になるのでお勧めです。
John PizzarelliのIt Could Happen To Youはノリのよい軽い感じの演奏で4つ刻みのジャズギターを覚えたい方は必聴です。もちろんJohn Pizzarelliの歌も最高ですし、スウィングのリズムが心地よく肩の力を抜いて楽しめるジャズという感じで最高です。
バーニー・ケッセルによるゆったりとしたIt Could Happen To You。バップフレーズを主にコード演奏クリシェなど参考に出来るところ満載です。ジャズギターのコード演奏をIt Could Happen To Youで勉強したい方はバーニー・ケッセルをお勧めします。